――彼が誰と付き合っていようが関係ない。

  は笑ってそう答える。

  だって、もう自分とは別れたんだから関係ないじゃないかと。

  それは確かにそうだと思う。

  「私、平気だよ?」

  とは笑う。

  それは自分でも驚く事に‥‥何も感じなかったのだ。

  ただ、突然で驚いたけれど‥‥全然胸だって痛まない。

  「結局本気じゃなかったって事だね。」

  やれやれと肩を竦める彼女は、空を見上げて空気を吸い込むようにして、言う。

  「早く、本当の恋がしたいなぁ‥‥」

  どこか‥‥虚しい響きに聞こえた。




  香水の香りがする。
  強くて、吐き気がしそうな甘い香りだ。

  それが部屋のあちこちに染みついて‥‥頭が麻痺しそうだった。

  「‥‥あなたはとっても賢い人ね。」

  くすくすと女は赤い唇を歪めて笑い、ワインを一口‥‥飲んだ。

  「賢くて‥‥とても優しい人。」
  「‥‥」

  嘲るように笑い、静かにグラスを置くと、彼女はガウンの紐をゆっくりと解いた。
  ふわりと絨毯の上にそれを落とせば、中から何も纏わない白い肌が現れる。
  綺麗な身体だった。

  さあ。

  と彼女は誘うように笑い、男の前に立ち、

  「私を、愛してくれるわよね?」

  にこりと微笑み、問う。

  男は応えなかった。

  ただ、紫紺の瞳を静かに細めて、女の細い腰を引き寄せ、唇を合わせる。

  強い、酒の香りがした。

  それ以外は‥‥


  感じなかった。