もう一度、あの姿が見てえ。

  俺は着慣れたはずの着物に袖を通しながら思った。
  ふわりと香るのは俺の汗のにおいだけで、そいつの香りは残っちゃいなかった。
  当然だ。
  あれから随分と経ってる。
  だけど俺の脳裏にはしっかりとその姿が焼き付いている。

  恥ずかしそうに噛みしめた、唇の色がどんな色だったかも、全部。

  こんなにも鮮明に。



  「〜〜〜」

  襖を開けるとは酷く恥ずかしそうな顔で俺を睨み付けてきた。
  その着物は『俺』が良く見慣れたものだってのに、そいつが着ると全く別物に見えた。
  こんなにでかかったか?と、前にも思ったもんだった。
  まあ、男と女の身体の違いもあるんだから当然か。

  「も、もう良いでしょ!」

  は胸元の心許ない布をぎゅっと握りしめたままで言う。
  そうしているお陰で、前みてえに胸元は見えねえ‥‥ただ、裾から覗く臍が‥‥逆にいやらしく見える‥‥なんて言った
  ら、きっと出て行けって怒鳴りつけるに決まってんだろうな。

  「早く、着替え‥‥」

  と顔を真っ赤にして言う、に俺はぱたんと襖を閉めた事で拒否を示す。
  ぎくり、との肩が震えた。
  なんだか変な気分だ‥‥と俺は思う。
  そいつが着てるのは俺の着物だっていうのに‥‥
  それだけで、
  酷く興奮するんだから、な。

  ああそういえば前も同じ事を思ったんだっけか、と思いながら一歩を踏み出すと、は怯えるように一歩を下がった。
  あの時見せなかったその怯えた顔がたまんなく‥‥キた。



  花札で負けた方が、勝った方の言う事を何でも聞く事。

  花街まで来て何やってんだよ、おまえら‥‥って突っ込まれても仕方ねえ。
  俺はと一緒に酒を飲みに来たはずなんだが、芸者の姉ちゃんも呼ばずに酒を飲んで、いい具合に回ってきた所で突然
  が花札をやろうと言い出した。
  前に新八とやってるのを見て、俺が強いと思ったらしい。
  つっても、新八がやたらとでかい手で上がろうとしてるのを、俺が地道に小さな手で上がっていくのに焦ったあいつが大
  勝負に出ようて欲をかいて勝手に自滅しただけなんだが。
  まあそれはおいておいて、勝負をやるからには何かを賭ねえかと持ちかけたらがにやりと笑みを浮かべながらこう言
  った。

  「じゃあ、花札で負けた方が、勝った方の言う事を何でも聞く事。」

  よっぽど自信があったのか、のでかい言葉に俺は面白いと手を打った。
  別に、俺だってそこまで強いとは思っちゃいねえが‥‥勝負事っていうのは所詮は、運、だ。
  強かろうが弱かろうが、運に見放されてちゃどうにもならねえ。
  もしかしたら今日はツイてるかもしれねえって事で、勝負をはじめたら、ありえねえ札が手元に回ってきて、酒を二杯も
  飲まねえ内に『五光』なんて最高の手で上がる事が出来た。

  その後はそれこそいい札なんて回っては来なかったが、地道に進めていく内にの手持ちがすっからかんになった。
  の負け、だった。


  「で?何すればいいんですか?」

  花札をぺいっと放り投げながら潔く負けを認めるそいつは、偉いと思う。
  新八なら確実にごねてる。
  もう一勝負と言ってこないあたり、新八よりもずっとの方が男らしい。

  「‥‥なんでも‥‥良いんだな?」
  「勿論です。武士に二言はありません。」

  はすっぱりと言った。
  じゃあ、
  と俺はついと口角を引き上げて、口にした。

  「こいつを、もういっぺん着てみちゃくれねえか?」
  「っはぁ!?」



  とす、とす、と畳の上を歩く。
  くるりとの周りと廻りながら遠慮無くじろじろとの姿を見る。
  自分でもいやらしいとは思ったが、上から下までじっくりと舐めるように。
  前に衣装交換をしようとが言って、俺の着物を着たときにはこんなにじっくりと見る機会はなかった。
  あの時は総司も斎藤もいたし、何より堪能するよりも前に土方さんに見つかってこっぴどく叱られた。
  今日は、邪魔をする人間は誰もいねえ。
  因みに俺は店で用意して貰った安物の着流しに身を包んでいる。まさか素っ裸ってわけにもいかねえしな。
  「‥‥さ、左之さん‥‥」
  もういい加減に、とは視線を落としながらもごもごと呟く。
  胸元が気になるらしく、しっかりとにそこが握りしめられていて、そのせいで胸元があまりよく、見えない。
  その分腰の線は無防備に晒されて、横から見ると驚くほど細く、前や後ろから見ると、その括れた線がひどく悩ましげに
  感じる。
  じっと見つめていると、視線に気づいたか、はもう片方の手で腹を守るみたいに隠しちまった。
  そうして、ふいっと視線を逸らすとぶつぶつと不満げに呟いた。

  「‥‥なんで、こんなの着せたがるんですか‥‥」

  心底理解できない、という呟きに俺はにやりと笑った。

  「そりゃ‥‥見たいからに決まってんだろ?」
  「‥‥なにを?」
  怪訝そうには視線だけをちらりと寄こす。
  睨み付けるようなそれ、だが、いかんせん顔が真っ赤だから威力なんてもんはなくて‥‥逆に恥じらいと精一杯の去勢っ
  てのが男の欲を煽った。
  ごくりと喉が鳴る。
  こみ上げる衝動のままに手を伸ばすとがぎょっとしたように目を見開いて一歩下がった。
  が、余った袴に足を取られて、
  「っ!?」
  わ、という驚きの声さえ上げられずにその場に尻餅をつく。
  「大丈夫か?」
  と声を掛けながら近付くと、はいたたと呻いて「大丈夫」と言いかけ、
  「うわぁあ!?」
  転んだ弾みで離しちまった胸元が露わになっている事に気づいて慌てて両手で隠した。
  そうして身体をきゅうっと丸めて顔を真っ赤にして、ひどく恥ずかしそうな顔で、
  「も、もう、許してくださいよぉっ」
  なんて泣きそうな声で言うもんだから、俺の方としても堪らねえ。

  「悪い、無理だ。」

  と短く言うのと、へたり込んだそいつに覆い被さるのとが同じだった。

  「わっ、ちょっ!?」

  頭を庇いながら畳の上に横たえ、のし掛かる。
  重たくねえように腹から下だけを身体で押さえつけると、はぎょっとした顔をして、俺を押し返した。
  「待った待った!左之さん落ち着いてっ!」
  「俺は落ち着いてる。」
  慌ててんのはむしろの方だ。
  いや、ちっとは俺も冷静じゃなくなってる‥‥とは思う。
  ことあっちの方は相当、やばい。
  「さのさっ‥‥」
  「おまえが、隠すのが悪いんだろ?」
  「隠すのが悪いって‥‥だって、これ、隠さないと見え‥‥」
  「見せろ。」
  押しのけようとする両手首を掴んで、ぐいと畳の上に押しつける。
  そうすると目に痛いほど白い胸元が飛び込んで、俺は思わず一つ、唸った。
  赤い衿がの肌の白さを一層際立たせている。
  暴れるたびにふるっとその柔らかい膨らみが揺れ、その度に布はずれて、胸の谷間を露わにさせていくのをこいつは気づ
  いてるんだか‥‥
  「左之さん、ほんと、もう堪能したでしょ!?
  私、着替え‥‥」
  「まだ堪能してねえよ。
  誰かさんが肝心な所見せちゃくれなかったからな。」
  「肝心なって‥‥ひゃっ!?」

  震える胸元に誘われるように一つ、唇を寄せる。
  ちゅと音を立てて吸うと、の口から単に驚いただけじゃねえ声が漏れた。

  「や‥‥ンンッ!」

  そのまま唇を寄せたままやわやわと咬む。
  白い肌には簡単に痕がついた。
  時折歯を立ててみると、ひくっと喉が震えて、噛みしめた唇の隙間から甘ったるい吐息が漏れた。

  「さ‥‥の、さっ‥‥」
  「、おまえ‥‥胸弱ぇよな?」
  「ばか、何いっ‥‥」
  もう良いから離して、と力無い抵抗の声が上がる。
  勿論、俺は離さねえ。
  一度胸の膨らみの間に鼻先を埋めて、それから布の上から鼻先を押しつけて乳首を探った。

  「やっ!」
  ちり、と布と肌が擦れて感じるみてえで、少しもしない内にぷっくりと布を押し上げるように乳首が立ち上がった。
  それを布ごと、咬む。
  てめえの着物を口に含むってのは正直どうかと思ったが、この際どうでも良い。
  「やっ、やだぁっ」
  いつもならばそれだけで感じて涙交じりの声で可愛く喘いでくれるってのに、布越しの愛撫となると多少強く噛んだ所で
  いつもみてえな威力はないらしい。
  ならばと胸元を乱そうとすると、はいやだともう一度言って身を捩った。
  押さえつけられても出来る限界まで身体を横にして、俺の手から逃れようとする。
  そうして身体を横向きにしたときに、今度は袖口から白い肌が覗いた。
  大きく開いたそれから、柔らかい乳房の側面が零れて、
  「‥‥」
  掴んでいた手首を離して、二の腕を掴み、押し上げた。
  「‥‥え?」
  戸惑ったようなの声を聞きながら顔を近づけていき、
  「ば、何してっ!」
  袖から鼻先を忍ばせるとがぎょっとしたような顔で俺を見た。
  ふわりと強くのにおいがして、頭が一瞬、ぼうっとする。

  「へんた‥‥ぁっ‥‥」

  そのまま腕の付け根に唇を寄せて、そのままゆるりと舌先を滑らせる。
  乳房の側面の輪郭をなぞればはびくりと身体を震わせた。

  「ぁっ、やっ‥‥」

  の声が甘く変わった。
  気持ちが良いんだと知ると、俺は更に大胆に舐った。
  舐めて、吸って、囓って、俺の唾液でべたべたになるまで、舌を這わせた。

  「さの、さぁっ‥‥」

  涙交じりの声が俺を呼ぶ。
  なんだ?と答える俺の声はか掠れていた。

  「そ、こ‥‥なんかっ‥‥」
  喉を逸らして喘ぐに問いかける。
  「善い、か?」
  問いかけながらもう隠す事もなくなった胸元から手を差し込み、乳房を手に収める。
  「イ‥‥ぁあんっ」
  ふにゃ、と形が変わるほどに揉んで、すぐに探し当てた乳首をくるくると指先でこね回すとはびくっと背を震わせて
  甘く啼いた。

  「横っ面が弱いとか‥‥どう、なんだよ。」
  は、と笑った瞬間に吐息が肌の上を滑る。
  は身体を丸くしたままで「ん」と小さく息をのみ、だってぇ、と涙と欲で濡れた瞳を開き切なげに眉を寄せた。
  「い、ん、だもっ‥‥」
  「‥‥それ‥‥」
  あんまり気持ちよさそうな顔をするから、ついつい訊ねてみたくなる。
  顔を離して覗き込むと、濡れた琥珀が俺を、ぼうっと見つめた。
  力のねえ無防備なそれに、ひどく欲情する。

  「こっちと横と、どっちが気持ちいいんだ?」
  「ひゃんっ!」

  きゅ、と乳首を摘むとの口から可愛い声が上がった。
  そうしてすぐに俺を恥ずかしそうなそれで睨み付けてきて、

  「そんなの‥‥わかんないっ」

  ふいとそっぽ向くそいつが堪らなく愛おしい。



  「や、やだ、もう‥‥」
  やめて、とは懇願するように言った。
  そいつの顔はきっと羞恥で真っ赤に染まってるんだろう。
  目に涙を溜めて、恥ずかしそうな顔で、だけどどうしようもねえ気持ちよさに顔を歪めてるに決まってる。
  その顔が後ろからだから見えないのが残念だ。
  だからその分声を楽しませてもらおうと更に奥、の感じる場所を指先で突っついた。
  「ひぅっ!」
  予想通り、は善い声を上げてびくんっとつま先までを震わせた。
  とろりと見えない手元にはしっかりと濡れた感触。
  感じてる証拠だ。
  「、嫌だって言う割には随分ぐちゃぐちゃに濡れてんぞ。」
  わざと卑猥な言葉をぶつけると耳までがかぁっと赤く染まる。
  後ろからだとよくそれが見えた。
  「だ、だって!左之さんが変な事、するから!!」
  泣き出しそうな声に俺はついつい意地悪く笑いながら反論しちまった。
  「変な事?
  おまえがいつも恥ずかしいっていうから、脱がさずにやってるだけだろ?」
  「そ、そうだけど、これは‥‥」
  違う、と言いかけた言葉をきゅっと花芽を摘んで遮った。
  「ぁ、ああっ!?」
  予想外の刺激にはびくっと背を撓らせ、腰をくねらせた。
  残念ながらそいつのそこがどうなってるか‥‥っていうのは分からない。
  きっと舐めまくった時みてえに、ぐちゃぐちゃに濡れて、綺麗なんだろう。
  今の俺にはそれを見ることは出来ない。
  その代わりに袴の襞から差し込んだ手で、濡れた感触を確かめるように何度も、何度も、そこを嬲った。
  「あ、あっ!だめっ、そんな、さわったらぁっ」
  俺の脚で両足を開かされた状態のまま、は腰だけを器用にくねらせ、喘ぐ。
  身体を揺らす度に白い乳房がたぷたぷと、水が揺れるみたいな音を立てて揺れる。
  それに一層俺の欲は煽られ、指の動きを激しくした。
  ぐちゅ、と濡れた音は強くなり、の嬌声も高くなる。

  「だ、だめっ、そこ、や、やぁっ」
  「善い、んだろ?
  素直に善いって言えよ。」
  「や、やらぁっ、あ、ふぁあんっ!」

  中と外を同時に激しく責める。
  柔らかい膣肉が奥に誘うみたいに蠢いた。
  誘われるままに中に穿って、くにくにとあちこちの壁を押し返せば驚くみたいにびくん、びくんと内部が跳ねる。
  身体も同時に跳ねた。
  は俺の腕に取りすがって、啼いた。
  「や、おねがっ、も、だめ、だからぁっ」
  腕に身体を押しつけられると必然、裸の胸が俺の胸に押しつけられる事になる。
  自覚があるんだかねえんだか、柔らかいそれに腕を揉まれてるみてえで‥‥たまらねえ。
  「なんだよ、そいつはおねだりのつもりか?」
  「ち、が‥‥ぁうっ」
  強請られたなら与えてやらなきゃならねえよなと、袴越しに勃ちあがったそいつを押しつける。
  尻の割れ目に擦りつけるように押し当てれば押し返すように腰を押しつけられた。
  早くとせがまれている気分になる。

  「分かってるって‥‥すぐに、でけえの挿れてやるから‥‥」
  「や、やっ、ン、ん、ぁああ――」

  悲鳴じみた声が耳をついた次の瞬間、ぎゅうとの膣内が強く引き絞られ、指を引きちぎられそうになる。

  ぎゅうと丸められた背がやがて力を失って俺の背中にどさと預けられる頃、手首まで濡らした蜜がとろりと大量に落ちて
  いくのを感じた。
  の汗がうなじを滑り落ちて着物に吸い込まれていくのを見ながら、そいつの汗のにおいも甘いと感じた。



  「焼き捨てられるのと、水浸しになるの、どっちが良い?」
  「いやいや、んなことしたら意味がねえだろうが!」
  「よし、じゃあ焼き捨てるので決定−!」


 きみのあと



  リクエスト『衣装交換の左之さん再び』

  衣装交換再び‥‥ということで、楽しく書かせていただ
  きました!
  ただでさえ自分の服を着てる‥‥ってだけでテンション
  あがるっちゅうのに、左之さんのエロスな格好で更に上
  がる!という(笑)
  そんなこんなで大暴走な左之さんの図、でした。
  脱がしてないのにエロス度がやたら高い気がする(笑)

  そんな感じで書かせていただきました♪
  リクエストありがとうございました!

  2011.1.15 三剣 蛍